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景観を守りながら、地域で循環させる。

白馬村で始まった「屋根を地域の発電所に」する挑戦

2026.5.18
コラム
景観を守りながら、地域で循環させる。 白馬村で始まった「屋根を地域の発電所に」する挑戦

長野県白馬村。北アルプスの山々に抱かれたこの地は、世界中から人々が訪れる美しい景観を誇ります。しかしその美しさを守ることは、同時に「脱炭素」という現代の課題に対する大きなハードルでもありました。

今、全国の自治体では、山を切り開き、景観を犠牲にするメガソーラーから、建物の屋根を活用する「屋根置き型」へと再エネ導入の主軸が移っています。

白馬村はこの潮流をさらに一歩進め、景観との調和、そして地域内での「電力の地産地消」を、官民連携という枠組みで実現しようとしています。

厳しい景観基準が求めた、新しい屋根のスタンダード

白馬村には、良好な景観を守るための厳しい景観条例(※1)が存在します。同時に、日本有数の豪雪地帯でもあるため、従来の「架台を用いた太陽光パネル」を後付けする方法では、景観への配慮と、積雪荷重による破損リスクの回避という二つの課題を同時に解決することが困難でした。

こうした背景から、建物本来の姿を保ちながら発電機能を実装する「屋根一体型太陽光パネル」の導入は、白馬村の良好な自然環境を損なうことなく、次世代へ継承していくための必然的な、そして主体的な選択となりました。

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モノクロームの「Roof-1」は、金属屋根と太陽光セルを一体化させた屋根一体型太陽光パネルです。外観は洗練された金属屋根そのものであり、建築の意匠を損なうことなく、建物全体を「発電所」へとアップデートします。この製品特性こそが、白馬村の高い景観基準と厳しい自然環境をクリアする、これからの屋根のあり方を示しています。

「公共」と「民間」を繋ぐ、電力の地産地消

今回のプロジェクトでは、村の公共施設と民間企業である「THE NORTH FACE GRAVITY HAKUBA(株式会社ゴールドウイン)」が連携し、施設間で電力を融通し合う仕組みを構築しています。

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現在導入されている施設と、各施設の発電規模は以下の通りです。

  • 白馬村立白馬中学校: 出力 65.0kW
  • 保健福祉ふれあいセンター: 出力 125.4kW
  • THE NORTH FACE GRAVITY HAKUBA 出力 45.1kW

これら3拠点を合わせた年間想定発電量は約20kWhにのぼります。

特筆すべきは、各施設で曜日ごとに電力需要のピークが異なる「需要の逆相関」を活かしている点です。 中学校やふれあいセンターが休みとなる週末や祝日に発生した余剰電力は、観光客で賑わう店舗へと送られます。反対に、店舗の客足が比較的落ち着く平日は、授業や部活動で電力を多く消費する中学校やふれあいセンターなど公共施設へと電力を融通します。

デジタル技術で需給を最適化し、地域内で生まれたエネルギーを無駄なく使い切る。このモデルは、既存の屋根という未利用資産を最大活用する、次世代の地域経営における、一つの理想的なあり方ではないでしょうか。

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積雪地域における太陽光発電の課題を克服する

一般的に、積雪地域での太陽光発電は「冬期の発電量低下」や「落雪による破損・落雪事故」が課題とされてきました。しかし、白馬村の事例はこの定説に対し、技術面から実効性のある「解」を提示しています。

Roof-1は、垂直積雪量460cm※2)相当の設計荷重に耐えうる強度を確保しています。さらに、屋根表面がフラットなため自然な落雪を促し、架台式パネルで懸念される隙間への着雪や凍結トラブルを構造的に排除しています。

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また、避難所に指定されている中学校などの拠点に導入することで、停電時の自立電源を確保。環境負荷の低減と、雪国特有の災害リスクへの備え(レジリエンスの向上)を同時に実現しました。

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公共資産のポテンシャルを、脱炭素の力に変える

自治体にとって、公共施設の脱炭素化は避けて通れない課題ですが、予算の確保が常に障壁となります。ここで注目したいのが、Roof-1は新築に限らず、既存建物の屋根修繕に合わせて導入できる点です。

本来は「維持管理コスト」として処理される屋根の張り替えを、将来的な「光熱費削減」や「環境価値の創出」を生む投資へと転換できることは、財政面でも大きなメリットとなります。地域の景観を損なうことなく、既存の公共建築を次世代仕様へとアップデートしながら再生可能エネルギーを着実に増やしていく。白馬村の試みは、限られた予算と資産の中で脱炭素を目指す、多くの自治体にとって現実的な選択肢となるはずです。

結びに:屋根から始まる、地域の自立

白馬村の丸山村長は、この取り組みを「雪国における再エネ活用のスタンダードにしたい」と語っています(※3)。

景観を守りながら、電力を地産地消し、地域の未来を自らの手でつくる。

合理的なシステムと建築としての美しさを両立させた白馬村の挑戦。この小さな循環が、同じ悩みを持つ全国の自治体や、地域の風景を描く設計者の皆さまにとって、新しい一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

白馬村の事例を通して、 「自分たちの自治体でも、同じような取り組みができるのか知りたい」 「もう少し具体的な話を聞いてみたい」 と思われた際には、お気軽にお問い合わせください。

※1 白馬村景観条例: 良好な景観形成のために定められた基準。詳細は白馬村環境基本条例を参照。

※2 設計荷重について: 屋根一体型構造により、豪雪地帯特有の積雪荷重(積雪対応モデルで直積雪量460cm相当)に耐える強度設計がなされています。

詳しくはこちらのコラムもご覧ください

積雪地帯でも、太陽光パネルは諦めなくていい。屋根一体型のRoof-1・外壁材一体型のWall-1という選択を。

※3 丸山村長のコメント: 白馬村・株式会社ゴールドウイン・モノクロームによる「官民連携による脱炭素化の推進に関する共同実証実験」の発表(20241028日)および白馬村公式リリースより。

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