
太陽光パネルを載せなければならない。でも、載せる屋根が足りない。都市部の商業施設を設計していて、この壁にぶつかったことはないでしょうか。
本記事では、屋根に頼らずに太陽光発電を確保した導入事例を紹介します。壁が発電面になること、そしてそれが主要な外壁でなくてよいこと。キュービクルの目隠しを、発電する壁で構成した事例です。
都市部の商業施設では、条例で太陽光発電設備の設置が求められます。設けるかどうかではなく、必要な発電容量をどこで満たすかが、設計の与件になります。
ただ、いざ載せる面を探すと、設計の現場からはこんな声が上がります。
「屋上は避難設備や消防設備、受変電設備といった必要な設備で埋まっていて、太陽光パネルに回せる面がほとんど残らない」
「太陽光発電の容量は確保しろと言われる。その一方で屋上の緑化も求められていて、少ない屋上を取り合うことになっている」
面が足りなくても、求められる容量は変わりません。設計者はさまざまな工夫と検討を重ねますが、最後はやむなく、わずかに空いた屋上に架台式のパネルを並べて必要な容量を確保し、露出した架台とフレームを壁やルーバーで隠す。そうした苦肉の策に行き着くことも少なくありません。
屋根が足りないなら、壁を使えないか考えます。太陽光パネルは屋根に載せるもの、という思い込みを外せば、壁も発電面になります。ただ、多くの人がイメージするのは外壁に後付けするパネルで、壁材そのものが発電する外壁材一体型のパネルはまだ稀です。これなら、壁がそのまま発電します。
発電面にできるのは、主要な外壁だけではありません。敷地には、設備を隠すために立てるものがいくつもあります。キュービクルの目隠し、区画を仕切るフェンス、機器を覆うルーバー。日射を受けながら、これまで発電には使われてこなかった面です。意匠の都合でどのみち立てるものなら、それを発電する壁でつくれば、屋根に頼らずに発電容量を確保できます。
その一例が、キュービクル(受変電設備)の目隠しです。
景観に配慮する建物では、屋外に据えるキュービクルをそのまま見せず、フェンスやルーバーで目隠しすることがあります。意匠の上では、しばしば隠す対象になる設備です。ただ、その目隠しが発電を担うとは、これまで考えられてきませんでした。
今回紹介する案件では、この目隠しをWall-1で構成しました。キュービクルを覆う目隠しが、そのまま発電します。

今回の案件は、商業ビルの屋上にあります。一般の利用者は立ち入らず、建物管理者が使う設備区画です。 キュービクルをコの字型のフェンスで囲い、正面と側面にWall-1を配置しています。設置したWall-1は計11枚(正面8枚、側面3枚)、残る面は色を合わせた特注の板金でそろえています。発電出力は約1.2kW。フェンス内に立ち入れるよう、同色のドアも設けています。

正直に言えば、キュービクルの目隠しは、Wall-1が本来想定した使い方ではありません。Wall-1は建物の外壁を発電面にするための製品です。それでもこの事例を紹介するのは、この応用が、設備を置く面が足りないという現場の課題に、直接応えるからです。
この方法には、設計者にとっての利点がいくつかあります。
ひとつは、屋上のスペースを取らないことです。架台式のパネルは、太陽に向けて斜めに設置するため、屋上に置き場所が要ります。一方でWall-1は、垂直に立てて発電するよう設計された製品です。屋上の面積を使わずに発電を足せるので、限られた屋上を、緑化や他の設備と取り合わずに済みます。
もうひとつは、この事例では建築確認申請を伴わずに導入できたことです。独立した目隠しフェンスとして設け、太陽光発電設備として建物の確認申請に盛り込む必要がなかったためです。建物本体に手を入れる大がかりな工事も避けられるため、既存の計画への影響を小さく抑えられます。
この事例は、建物管理者のみが立ち入る屋上の区画に設置しています。Wall-1は発電する面のため、人が容易に触れない場所であることが前提で、触れないよう周知するなどの運用とあわせて導入しています。
不特定多数が立ち入る屋上に設置できるかは、人がWall-1に触れないように配置や区画を分けられるかによります。設置場所の条件によって変わるため、設計の早い段階でご相談ください。
Wall-1は、金属の壁材と太陽光モジュールが一体になった外壁材一体型太陽光パネルです。壁として施工できるため、目隠しをつくる工事と発電設備を設ける工事が、一度で完了します。既存の壁を残したまま重ねるカバー工法にも対応します。
意匠の面でも、目隠しに使いやすい配慮があります。表面はマット仕上げで、光の映り込みを抑えています。光沢は一般的な架台式の太陽光パネルの約40分の1で、反射のぎらつきが景観から浮く心配がありません。屋根置きのパネルと違い、壁面に設置するため、積雪で発電量が落ちることもありません。出力は25年間の無償保証が付き、万一の損傷時にはモジュール単位で取り外して交換できます。
キュービクルの目隠しは、その一例にすぎません。屋根や主要な外壁が使えなくても、発電に回せる面は、敷地にまだ残っているかもしれません。
敷地のどの面を発電に使えるか、意匠を崩さずにどう組み込むか。設計の段階から、一緒に考えます。発電の規模や接続の仕方によっては、系統連系の機器やコストを抑えられることも。こうした検討は早いほど選択肢が広がるので、図面の段階で一度ご相談ください。
隠すための壁を、発電する壁に。
Q. 条例で太陽光パネルを載せなければならないのですが、屋根も外壁も面が足りません。
A. 屋根や主要な外壁だけでなく、キュービクルの目隠しやフェンス、ルーバーといった立面も発電面にできます。Wall-1は壁として施工できる外壁材一体型の太陽光パネルのため、これまで発電に使っていなかった面を発電面に変えられます。敷地の条件を見ながら検討しますので、お問い合わせください。
Q. キュービクルの目隠しにWall-1を使うと、建築確認申請は必要ですか。
A.建物や設置の条件によります。今回の事例では、独立した目隠しフェンスとして設け、太陽光発電設備として建物の確認申請に盛り込む必要がなかったため、建築確認申請を伴わずに導入できました。ただし、規模や高さ、地域、設置の仕方によって要否は変わります。個別の条件をうかがったうえでご案内しますので、お問い合わせください。
Q. 太陽光パネルの反射やまぶしさは、問題になりませんか。
A. Wall-1は表面がマット仕上げで、光の映り込みを抑えています。光沢は一般的な架台式の太陽光パネルの約40分の1で、周囲へのぎらついた反射が出にくい仕上がりです。
Q. 一般的な架台式の太陽光パネルと何が違いますか。
A. 架台式は設置面の上に金属のフレームで固定するため、隠すための処理が別途必要になりがちです。Wall-1は壁材そのものとして施工するため、目隠しと発電を一つの工事で兼ねられます。壁面設置のため、積雪による発電量の低下もありません。
Q. だれでも立ち入れる屋上でも設置できますか。
A. Wall-1は発電する面のため、人が容易に触れない場所に設けることが前提です。建物管理者だけが入る区画などが向いています。不特定多数が立ち入る屋上でも、別のフェンスや囲いで距離を確保できれば検討できますので、まずはご相談ください。
Q. 高圧受電の建物ですが、太陽光を足すと連系のコストが大きくなりませんか。
A. 発電の規模や接続の仕方によっては、高圧連系に必要な機器を抑えて、コストを小さくできる場合があります。ただし、扱いは発電規模・逆潮流の有無・電力会社によって異なり、キュービクル側の設計検討も必要です。条件を早めにうかがえるほど検討の幅が広がりますので、設計の早い段階でご相談ください。